三重県主催の「ガストロノミー人材育成講座」で、美食の街に向けた提案をしました
クリエイティブ プロデュース
アールイー株式会社(本社:東京都豊島区、代表者:今井直樹・大慈弥晶土、以下「アールイー」)が三重県より受託・運営した「令和7年度 ガストロノミー人材育成事業」の一環として、「ガストロノミー人材育成講座」を企画し、1月26日(月)に、伊勢市の「オランジェ五十鈴川テラス」で実施しました。
本講座は、三重県ならではの食材や食文化に光を当て、ガストロノミーを実践する料理人を育成し、地域の魅力向上と観光消費の拡大につなげることを目的としています。当日は、県内の料理人を中心に、飲食・観光関係者など約30名が会場に集まったほか、オンライン配信も行われました。
講座のプログラム
①テーマ食材「的矢かき」生産者による食材紹介
「佐藤養殖場」代表取締役 濱地大規氏
②三重県・新潟県のトップシェフによる調理デモンストレーション
三重県:HOTEL VISON内「IZURUN」中武 亮シェフ
新潟県:灯りの食邸「KOKAJIYA」熊倉誠之助シェフ
③スペイン料理人交流参加者活動報告
ファシリテーター:「株式会社 Food HEROes」代表 江六前 一郎氏
パネリスト:フランス料理「ルバンボッシュ」福井 隆一シェフ
イノベーティブ料理「Restaurantタナカ」田中弓普シェフ
炭火割烹「稲米舎(とうべや)」上野誠広料理人
えぐみや臭みが少ないきれいな味わいの「的矢かき」
講座の冒頭では、三重県を代表するブランド牡蠣「的矢(まとや)かき」について、生産者である有限会社佐藤養殖場 五代目代表取締役・濱地大規さんが登壇しました。
三重県志摩市の的矢湾で100年以上の歴史を誇る有限会社佐藤養殖場は、創業から伝統と技術を磨き続けてきた養殖場です。佐藤養殖場が生産する「的矢かき」は、佐藤養殖場だけが育てる唯一のブランドであり、ほかの生産者では名乗ることができません。
的矢湾は周囲の山から栄養豊かな水が流れ込む独特の環境に恵まれ、プランクトンが豊富な海で育つ牡蠣は、ふっくらとした身と上品な味わいが特徴です。えぐみや臭みが少なく、苦手な人でも「おいしい」と感じる人が多いと評価されています。

また「的矢かき」は2002年に三重ブランド第一号として認定されており、松阪牛や伊勢えびなどと並ぶ三重県を代表する特産品の一つです。そのブランド力によって全国のホテルやレストランに直接出荷され、高い評価を受けています。
さらに佐藤養殖場は、環境・地域循環への配慮にも力を入れています。牡蠣殻にはミネラルなどの栄養分が豊富に含まれることから、採取後の殻を粉砕して肥料や土壌改良材として活用し、山や農地へ還元する取り組みを行っています。この循環によって自然環境を保全し、豊かな海を次世代に繋ぐという理念を掲げており、地域のSDGs推進パートナーにも認定されています。

県内外トップシェフによる調理デモンストレーション
続いて行われた調理デモンストレーションでは、三重県・HOTEL VISON内「IZURUN(イスルン)」料理長の中武亮さんと、新潟県「灯りの食邸 KOKAJIYA」料理長の熊倉誠之助さんが的矢かきを使った料理を披露しました。
三重県と新潟県は、それぞれがスペイン・バスク地方の知見を取り入れ、その上で両県が連携して、お互いの強みを高め合あう関係として、コラボレーションが実現しました。
中武さんは、牡蠣に海藻のあおさ海苔から作ったパウダーをまぶしてバターでゆっくりと焼き上げ、豊かな三重県の海を表現します。さらに、県内で採れる日本で開発された野菜「アレッタ」のソテーを合わせて、的矢かきのクリアなうま味にアクセントを加えます。
一方の熊倉さんは、的矢かきを身とヒダ・貝柱に分けて別々に調理します。身は、さっと湯通しして霜降りに。ヒダと貝柱は、新潟県の伝統野菜・体菜の塩漬けを使った郷土料理「煮菜」に合わせてピュレ(半液体状)にして、味わいのベースにしました。


食材に近い場所で料理をする中武氏の料理には、食材をストレートに味わってほしいという思いがこめられているのに対し、熊倉氏の料理は、冬は雪深く食材が手に入りい地域で発酵食材を活用する料理で、全く違ったアプローチで的矢かきを調理していたのが印象的でした。

なお、デモンストレーションでは、的矢かきのほか、三重県で栽培されている「伊勢茶」を使ったデザートの提案も行われました。
当日調理実演した料理
中武 亮さん
・的矢牡蠣
・一口抹茶ぜんざい


熊倉誠之助さん
・「的矢牡蠣」と新潟郷土料理「煮菜」
・伊勢茶の琥珀糖

美食の街に向けての可能性や課題とバスク地方の例
講座の後半では、三重県が実施したスペイン料理人交流事業(2025年11月4日~11月6日にスペイン・バスク州で開催)に参加した料理人による活動報告が行われました。
ミシュラン3つ星レストラン「アルサック」料理人との料理交流やバスク市内食品市場、食関連施設の視察や世界的な美食の街・サン・セバスティアンでの3日間の学びを、各テーマごとに発表しました。
アルサックの料理人との料理交流では、日本からもっていった食材と現地の食材を組み合わせながら三重県を伝えようとした試行錯誤の過程を交えながら報告しました。「Restaurantタナカ」田中さんは、「トンテキ」や「なが餅」といった地元・四日市市の食文化をフランス料理の手法で再構築して提案したといい、アルサックのシェフからも「おもしろい」と高評価を得たといいます。
サン・セバスティアンの「市場」や「バル」、「レストラン」を訪問して感じたことも発表されました。なかでも2度目のサン・セバスティアン訪問になった「ルバンボッシュ」福井さんは、地域の独特な会員制の料理コミュニティ「美食倶楽部」についてスペインの歴史を背景にした発足の成り立ちを発表し、美食の街に必要な食のコミュニティの重要性を伝えていました。

後半のトークセッションでは、ファシリテーターの「株式会社 Food HEROes」の江六前氏の進行のもと、参加した三重県の料理人に向けて「美食の街に向けての可能性や課題」というトークテーマでセッションを行いました。
とくに印象的だったのは「稲米舎(とうべや)」上野さんが帰国早々、サン・セバスティアンの美食倶楽部にインスパイアされた料理イベントを開催した話でした。参加者が食材を持ち寄り、紀州備長炭を使って料理を作りあうというもので、手ごたえや課題などを報告。「美食の街に向けての可能性や課題」というトークテーマをより明確に参加者に伝えることになりました。

トークセッションの総括としてファシリテーターの江六前氏は、中小規模のコミュニティの形成から県全体のムーブメントに拡大していくことの重要性を指摘したうえで、三重県が美食の街になるために、バスクの先進的レストラン「アルサック」が中心になり1970年代に提唱した新バスク料理(Nueva Cocina Vasca)の宣言を例にあげ提案をしました。
宣言はおもに3つあるといいます。
・地域にある古いものを守る
・新しい技術や考え方を受け入れ融合させる
・得られた知見を公開し、多くの人と共有する
「新バスク料理では、この3つを守ることでその料理が新バスク料理といえるとしています。価格帯や業態、料理人の年齢、修業した期間といった条件や、ときに主観的になりがちな『味わい』といった要素を含んでいません。活発に新バスク料理を議論する共通言語としての3つの条件を、三重県も作ることがスタートになるのではいでしょか」と提案をしました。
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4時間半におよぶ長時間の講座でしたが、最後まで多くの参加者が真剣に耳を傾けていたのが印象的でした。それぞれの立場で、自分事として三重県を美食の街にしたいという思いをさらに強めることになった講座になりました。
参加者の声
「写真だけでなく、実物の的矢かきを見せての説明がとてもわかりやすく理解できました。牡蠣殻を利用した豊かな自然づくり、SDG’sの取り組みが素晴らしいと思いました。今後の課題も知れ、次の100年を目指している取り組みに注目したいです」
(三重県内・飲食業経営者)
「三重の食文化、鮮魚のクオリティ、世界一の紀州備長炭など、良質な素材が揃っているので、料理人や他の方たちを巻き込めば、注目されるようになると思いました」
(三重県内・飲食業経営者)
「美食の街づくりに向けて、もっと料理人、食関係者の繋がりが必要だと感じました」
(三重県内・飲食業経営者)
■ イベント実施概要
名称:ガストロノミー人材育成講座
日時:令和8年1月26日(月)13:00〜16:30
会場:ザ・オランジェガーデン五十鈴川「オランジェ五十鈴川テラス」(三重県伊勢市)
主催:三重県雇用経済部 県産品振興課 県産品販売促進班
運営:アールイー株式会社
参考URL:「令和7年度ガストロノミー人材育成事業業務委託に係る企画提案コンペの結果について」https://www.pref.mie.lg.jp/NYUSATSU/m0031100208.htm

