アールイー株式会社は、巣鴨信用金庫の皆さまとともに、家庭から出る廃食用油の回収を通じた取り組みを進めています。
地域の暮らしに寄り添う金融機関である巣鴨信用金庫の店舗では、家庭由来の廃食用油回収ボックスが設置され、地域の方々が日々の生活の延長で、無理なく資源循環に参加できる環境が整えられています。
本取り組みは、家庭から出る廃食用油回収を一つのきっかけに、環境のことを少し身近に感じてもらえればという思いから始まりました。現在は、本店・池袋支店・板橋支店の3店舗で回収を行っており、現場では少しずつ手応えも感じられるようになってきています。
<巣鴨信金とアールイーの家庭用廃食油回収プロジェクトの現状>
- ⦁ 家庭由来の廃食用油回収を、巣鴨信用金庫の3店舗(本店・池袋支店・板橋支店)で実施
- ⦁ 設置から約3週間で回収ボックスが満杯になるなど、想定を上回る利用状況
- ⦁ 特別な告知を行わなくても、継続的な持ち込みが発生
- ⦁ 非対面で利用できる点について、地域の方から好意的な声
- ⦁ 金融機関・自治体・民間事業者が役割分担しながら、取り組みを継続
本対談では、こうした取り組みを進める中で見えてきた、金融機関と地域がともに環境課題に向き合うことの意味や、現場での率直なやりとり、そしてアールイーがどのような姿勢でこの活動に関わってきたのかについて、具体的なエピソードを交えながらお話ししていきます。
今井
巣鴨信用金庫さんは、地域に根ざした金融機関として知られていますが、金融業以外にも、地域のためにさまざまな活動をされていますよね。どのような取り組みをされているのか、改めてお聞かせいただけますか。
上杉氏
はい。巣鴨信用金庫では、SDGsの17の目標のうち、13の目標に関連した取り組みを行っています。ただ、私たちにとってSDGsは特別なものというよりも、「地域を豊かにする」という考え方を形にしたものだと捉えています。金融機関として、ご融資やご預金といった本業はもちろん大切にしていますが、それだけにとどまらず、地域の皆さまやお取引先の事業がどうすればより良くなっていくのか、という点にも日々向き合っています。その一例として、「四の市」というビジネスフェアを年に2回開催しています。地域の事業者の皆さまが自社の商品や取り組みを紹介し、新たな出会いや商談につながる場として、少しずつ育ってきました。また、衣料品のリサイクルなど、地域の方々が気軽に参加できる取り組みも行っています。
巣鴨信金として初の取り組み「家庭用廃食油回収ボックス」の設置
今井
今回、「家庭の廃食用油回収」について巣鴨信用金庫さんにご協力いただきましたが、御庫にとっては初めての取り組みでしたよね。設置までには半年ほどかかりましたが、その間、一緒に検討を重ねながらプロジェクトを進めていただきました。
上杉氏
そうですね。家庭から出る廃食用油の回収については、巣鴨信用金庫として今回が初めての取り組みでした。地域の企業の方からお話を伺い、意義は感じつつも、当時は地域でも前例がなく、どのように進めるべきかは正直悩みました。信用金庫の店舗には、日々さまざまなお客さまが来店されます。そのため、「誰が管理するのか」「引火性や揮発性といった性質をどのように説明するのか」「万が一トラブルが起きた場合にどう対応するのか」など、リスク面を曖昧にしたまま進めることはできませんでした。そうした点については、アールイーさんから一つひとつ丁寧に説明いただき、私たちとしても不安や懸念を整理しながら検討を進めることができました。初めての取り組みではありましたが、地域の声に向き合い、リスクも含めて一緒に考えながら進められたことが、今回の実現につながったと感じています。
今井
この取り組みに意義を感じてくださり、説得を続けてくださいました。
上杉氏
今井社長から「自治体により有価物かや廃棄物など取り扱いの見解が異なり、豊島区に関しては確認済」といった情報をいただいたり、引火点や揮発性に関する専門的な資料をご提供いただいたりして、それを一つひとつ整理して上申しました。最終的には、「取り組みながら試行錯誤して、一緒に課題を見つけていきながら運営しましょう」という形で、なんとか承認にこぎつけました。最初にお話をいただいてから、ボックスの設置まで、実に約半年かかりました。巣鴨信用金庫には「お客様の黒子に徹する」という考え方があります。地域の中で社会的な意義のあることをやりたいという方がいれば、その応援をする立場でいたいと思っています。そして、私たちのお客様には、価値観が似ている方が多いと思いますので、この回収事業についても共感してくださる方が多いのではないかと思っています。
設置3週間で、油のボトルが満杯に ― 想定を超えた地域の反応
今井
実際に回収ボックスを設置されてからの反応はいかがでしたか。
上杉氏
正直、設置したところであまり表立ってPRしていなかったので、そんなに来ないだろうと思っていたんです。ただ、私も本店にいるので、最初の数日は不安で、回収ボックスのところに立って様子を見ていました。そうしたら、始めて3週間ほどでもう目一杯になってしまって。今井社長に「ちょっといっぱいなので回収に来てもらえますか」と何度もお願いしましたよね。
今井
3〜4回は緊急で回収に伺いましたよね。私たちも嬉しい反応だったことを覚えています。
上杉氏
ありがたいことに、予想以上の反響でした。私がボックスの前にいるときにお持ちいただいた方からは、「巣鴨信金さんがこういう活動をされるのは、日頃お世話になっているから一石二鳥でいいね」というお声をいただきました。それから、意外だったのは「対面式じゃなくていいね」という反応です。家庭で出た油を持ってくるのは、どうしても「捨てに来ている」という感覚があるようで、少し後ろめたい気持ちがある方もいらっしゃる。非対面で気軽に入れられるのがいい、というお声は印象的でしたね。
今井
確かに、誰かに見られたくないという気持ちはわかります。
上杉氏
はい。そういう意味でも、非対面の仕組みは活きていると思います。ボックスは外から中が見えるので、他の方がどんなふうに入れているか確認してから、「次来るときに持ってこよう」と思っていただける効果もあるようです。
今井
地域の方だけでなく、金庫内でも何か変化はありましたか。
上杉氏
実は職員の中にも、自分で油を持ってきて入れている人がいるんです。自分がSDGsや再生エネルギーに貢献できる機会って、日常生活の中ではなかなかないですよね。この回収ボックスがあることで、「自分もそういうことに寄与できているんだ」という感覚を持ってもらえているようです。私自身も、実は少しだけ入れました(笑)。金庫としても、ここ数年でペーパーレス化をかなり進めていて、コピー機の使用も個別に管理して履歴がわかるようにしています。枚数自体が問題ではなく、そうした管理をすることで一人ひとりの意識を高めていこうという取り組みです。廃食用油の回収も、そうした環境への取り組みの延長線上にあると思っています。
今井
アールイーと一緒に取り組んでいただく中で、何か価値を感じていただいている点はありますか。
上杉氏
回収ボックスには全油連さんの問い合わせ先も掲示していますし、豊島区さんにもバックアップをいただいています。ただ、その中でも、私にとって一番身近な相談相手になっているのが今井さんです。何かあったときに相談するとレスポンスがとても速く、すぐに動いていただける。それが何よりの安心材料になっています。特にありがたいのが、資料の作成や説明の仕方です。廃食用油の揮発性や危険性については、金庫内でもかなり細かく確認する必要がありましたが、その際に今井社長から専門的な論文を共有いただいたことがありました。「これを全部読んでください」ではなく、「この7ページ目の下段に、こういう記載があります」と、必要なポイントを絞って説明していただけたんです。そのおかげで、内部での理解もスムーズに進みました。
今井
金融機関さんはコンプライアンスのルールが厳しいので、一つ間違えると大きな問題になりかねません。ですから、リスクの部分については、できるだけ正確に、分かりやすくお伝えするようにしています。
上杉氏
まさにその通りですね。廃食用油の扱いや、将来的にこの取り組みが収益につながるスキームになった場合の関わり方など、事前に整理しておくべき点はたくさんあります。そうした部分を一つひとつ丁寧にサポートしていただけるのは、本当に心強いと感じています。
今井
今後、巣鴨信金様としてはこの取り組みをどのように広げていきたいとお考えですか。
上杉氏
まずは、今の3店舗での取り組みを丁寧に続けていきたいですね。運用しながら見えてきた改善点を一つひとつ解決して、より良い形にしていく。そのうえで、他の店舗にも広げていけたらと考えています。また、アールイー様が豊島区さんや板橋区さんとも並行して話を進めてくださっているので、民間と公共が一緒に動ける形になってきている。私たちとしても「区役所もやっているなら」という説明がしやすくなりますし、相乗効果が生まれていると感じています。油が少し漏れたり、ボックスの上に置かれてしまったりといったことはありましたが、クレームやトラブルもほとんどなく、その都度改善を重ねてきました。池袋支店の警備員さんは「ここにビラを貼った方がいいんじゃないか」「私が案内できるようにしたい」と、自ら提案してくださるほどで。
今井
現場でそうやって思いを持って関わってくださる方がいるのは、本当に心強いですね。
上杉氏
はい。私自身、どんどん広げていきたいという思いがあります。まだ詰めるべき運用ルールはありますが、一つひとつクリアしながら、着実に前に進んでいきたいですね。
金融機関という、地域に最も近い存在が環境課題に向き合うことには、大きな意味があると感じています。
巣鴨信用金庫とアールイーの協業は、廃食用油の回収という身近な取り組みを通じて、地域の皆さまが日常の中で自然にサーキュラーエコノミーに関われる「きっかけ」をつくってきました。
「いつもの場所で、いつものついでに」そんな何気ない行動の積み重ねが、無理のない形で環境への意識を育み、まちの中に少しずつ根付いていくのだと思います。当社は今後も、地域の様々なプレイヤーの皆さまと共に、一つひとつの取り組みを丁寧に積み重ねていきたいと考えています。
(本記事は2026年1月に実施した対談をもとに構成しました)